基礎から学ぶ日経225について
金融機関が債権を放棄してくれたり、圧縮してくれたりということはまずあり得ない。
ある程度の企業になれば、経営危機に陥ったとき、金融機関からの借入金一〇〇〇億円を五〇〇億円に減額して企業を再建させるといった措置がとられることがある。
特にバブル崩壊後にはそうしたケースが続出した。
その結果、五年後にはその企業も立ち直り、再び株式を上場する企業も珍しくなくなっている。
個人に関しても、二〇〇〇年に成立した「民事再生法等の一部を改正する法律」(個人版民事再生法)によって金融検閲の債権を圧縮して、マイホームを守りながら再生をほかる道が開かれたが、それも、数年間は生活保護レベルのギリギリの生活をしのぐことが前提になっている。
しかも、債務を圧縮できるといっても、それはあくまでも消費者金融などの住宅ローン以外の債務であり、住宅ローンそのものは減額できず、せいぜい返済期間の延長や、一時的な元金返済の猶予などにとどまる。
個人版民事再生法を使えば、二〇〇〇万円残っている住宅ローンを半額にしてくれるなどといった期待はできない。
あくまでも、自力で全額返済するしか道はないのである。
自助努力でリスクに対応するしかない現実そもそも健全で優良な顧客を育成するため、不動産業界は消費者の立場に立って物件を勧め、それに合わせてより安全で確実な資金計画を立案する必要がある。
また、金融機関でも厳正な審査を行い、住宅ローンの持つ各種のリスクに関してもより具体的に説明し、消費者から十分な理解を得た上でローン契約を結ぶといった対応が求められる。
いわゆる「説明責任」の徹底ということである。
アメリカのように、金融機関や不動産会社のスタッフではなく、中立的な立場でその人に一番ふさわしい住宅ローンを紹介できる〝モーゲージブローカー〟などの専門職を確立する必要もあるかもしれない。
現実にアメリカでは住宅ローンの半分以上はそうしたモーゲージブローカーの紹介によるもので、消費者も一定の手数料を支払って、専門家のアドバイスを受けることが常識になっている。
しかし、わが国ではまだまだそうした専門家が育っていないし、消費者の側にもFP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家にお金を払ってまでアドバイスを受けるといった習慣が定着しているとはいえない。
国土交通省の肝いりで「住宅ローンアドバイザー」を育成しょうとする動きがはじまっているが、アメリカのモーゲージブローカーに比べると、その認定基準もまだまだ低いレベルにとどまっているのが現実である。
それだけに、消費者の側での自助努力が欠かせない。
企業側がある程度説明責任を果たそうとしても、受け手である消費者の側の知識が欠如していては、「糠に釘」「暖簾に腕押し」になってしまう。
そもそも住宅ローンとはどのようなもので、どんな金利タイプがあり、それぞれにどのようなリスクがあるのかといった点を十分に理解し、その上で自分たちの場合にはどのローンがいいのかを責任を持って選択する、いわば「自己責任」の意識を持つ必要がある。
先に触れたように、住宅ローンの選択に関しては、結果責任は自分で負うしかない。
誰も助けてはくれない。
それを前提に、すべては自己責任であるという認識を持てば、自ずと住宅ロー・ソをみる目も違ってくるし、不動産会社、金融機関の担当者の説明もシッカリと受け止められるようになるはずである。
今後の金利上昇によって増加が予想されるローン破綻、自己破産をできる限り少なくし、より多くの方が幸せなマイホーム生活を送れるようにするためには、業界サイドの説明責任以前に、まずは消費者サイドの自己責任の徹底が不可欠なのである。
まずは自己責任の意識の徹底から契約行為を行うときには、何によらず当事者間の合意が不可欠であり、その大前提となるのが、当事者の責任意識である。
売主や貸主側は契約内容に関して十分な説明責任を果たし、買主や借主側はその内容を十分に理解して、自己責任の意識を明確にして契約するということである。
当たり前といえば当たり前のことだが、その当たり前のことが必ずしも十分に徹底されているとはいえない。
まずは、買主、借主側の自己責任の確立こそが不可欠となってくる。
通常の消費生活を振り返っていただきたい。
主婦であれば、今日はどこのスーパーで野菜が安い、明日はどこそこなどと細かくチェックしているはずである。
会社員なら、備品ひとつ購入するにもさまざまな吟味を行うもの。
ところが、住宅ローンに関しては必ずしもそうとはいえない。
一〇〇円、二〇〇円単位の買物には神経質になっても、何千万円という買物になると全然違ってくる。
不思議な話である。
実はその点こそが重要な問題なのである。
住宅ローンリスクに関しても、事前に十分に研究して、将来的に金利が上昇しても影響がないようにする、返済額の増額など多少の変化はあっても、自分たちの家計なら問題なく乗り切れる仕組みをつくっておくIなどの確認作業が行われていれば、さほど問題になることはない。
しかし、それが十分に行われているとはいえない。
たとえば、住宅金融公庫が住宅ローンを実際に利用している人と、これから利用したいと考えている人の双方に対して、住宅ローンに対する意識を聞いた調査がある。
これをみると、住宅ローン利用者と利用予定者とでは、考え方や行動にかなりの差があることが分かる。
利用する前には随分と慎重に構えている人たちが、実際に利用するときには後先を考えずに決めてしまっている面が強いようにみうけられるのである。
夢のマイホームを前にして、気持ちが高ぶり、前後がみえなくなっている、というよりみようとしなくなっているのかもしれない。
最初に、住宅ローンを選ぶときに、主に誰の意見や考え方を重視してローンを決定するか(ローン利用予定者)、決定したか(ローン利用者)という質問に対する回答をみてみょう。
図表5にあるように、住宅ローン利用予定者では、「自分や家族で主体的に判断」が七七・七%と最も多く、次いで「住宅・販売事業者の勧め」が八・五%、「FPなどの専門家の勧め」五・〇%、「友人・知人の勧め」四二ハ%などとなっている。
これに対して、実際に住宅ローンを利用した人たちの回答では、「自分や家族で主体的に判断」がトップである点は変わらないものの、その割合は六六・四%に低下し、代わって、二位の「住宅・販売事業者の勧め」が二六・六%に増加する。
その他FPや友人・知人などの第三者の勧めの割合はやや少なくなる。
他人の勧めで自分たちの将来を決めていいのかつまり、マイホームを手に入れようといろいろ情報を収集し、研究を進める段階では住宅ローンに関しても十分に勉強して、自分たちで判断しようと考えているものの、実際に選択の場面に直面すると自信を失って、あるいは口車に乗せられて、住宅販売会社などの担当者の勧めるままに住宅ローンを決めてしまう人が少なくないわけである。
事実、国土交通省が不動産事業者を対象に行った調査をみると、半数近くの企業が不動産会社の担当者の勧めによってローンを決める客が多いとしている。
ローン利用者は自分で決めたと思っていても、実は不動産会社の担当者に、いいように誘導されているケースが少なくないと考えられる。
もちろん、住宅販売会社などの担当者の勧めるローンがすべて問題ありというわけではない。
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